抄録
老人医療にかんする財政調整は,次の3つの要件を満たす財政調整が望ましい。第1に,被保険者や地域住民のニーズにあった効率的な医療(効率性)と制度間格差の是正(公平性)のバランスを図ることである。第2に,医療から介護ヘシフトを促進するものであること,第3に,老人医療費の増大を抑制するシステムであること,である。この3つの要件にてらしてわが国の老人医療の財政調整を考慮すると,次の問題点がうかびあがる。かかった医療費全体について保険者全体および公費で財政調整をするために,各保険者の責任が明確でない。これは医療費高騰の原因である。また,病院から介護施設に老人を移すと社会的コストは安くなっても,地方公共団体にはかえって負担が重くなる。これは,老人医療と老人介護では,市町村の負担割合が異なるからである。
したがって, 将来的には, 老人医療と老人介護はサイフをひとつにし, 市町村を責任者として, 財政調整の対象もドイッの医療保険のように,標準的な医療費までとすることが望ましい。