1996 年 6 巻 1 号 p. 6-20
戦後最大の社会福祉改革のひとつといわれる公的介護保険制度では,「ケア・マネジメント」という医療および介護を中心とした福祉サービス給付の新しい手法が導入されようとしている。
これは適切かつ公正な福祉サービスの供給システムを目指して,クライアントの自立支援のために新しい援助の手法を制度的に確立しようとするものである。ある意味では,この福祉の世界でのインフォームドコンセントの手法(理念といってもよい)が,どこまであるべき方向に具体化されるかによって,介護保険が本当の「市民福祉」の制度となるかどうかの成否が決まるといえよう。第1部では「ケア・マネジメント」が導入された背景と,公的介護保険制度の関連について述べ,そのための2種類の客観的手法が現在開発されつつあるが,第2部ではそれらの手法の問題点について検討する。