医療と社会
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ハンチントン病の発症前遺伝子検査と医療福祉的サポートの現状
武藤 香織
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1998 年 8 巻 3 号 p. 67-82

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抄録

〈目的〉ハンチントン病の発症前遺伝子検査と医療福祉サービスのあり方についての問題を明らかにする。ハンチントン病は,常染色体優性遺伝の神経難病であり,不随意運動や痴呆などを特徴としている。CAGの繰り返し塩基配列の検索によって,1993年より発症前遺伝子検査が可能になっている。
〈対象者と方法〉九州北部に住むハンチントン病の介護者(家族)5名に対して,1回2-3時間の半構造化面接を行った。
〈結果〉5名のうち, 3名は発症前遺伝子検査に消極的であり, 2名はその存在を知らなかった。全例において,医療福祉サービスの利用経験はなかった。3名は家族会が発足しても参加する希望はなかった。2名は家族の中で病気の存在を隠していた。〈考察〉4名は子どもや孫に対する結婚忌避への恐怖を表明していた。結婚をめぐる差別の問題は,恐らく発症前遺伝子検査や医療福祉サービスの施策形成を検討するうえでも共通する問題点となりうるだろう。今後とも注意深く検討していく必要がある。

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