医療と社会
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包括的健康関連QOL評価尺度の個人レベルでの評価:
その問題点と可能性について
尾藤 誠司
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1999 年 9 巻 2 号 p. 69-75

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抄録

健康関連QOL(HRQOL)は新しい健康評価のためのアウトカムとして定着したように思われる。さらに現在,実際の医療現場でHRQOL測定を個人のデータとして利用することにも大きな注目が濯がれている。しかしながら,HRQOL尺度を個人データとして理解する場合,疫学的な方法による評価とは異なる性質や問題点が考慮されなければならない。
HRQOL個人評価のための方法論的な問題点として,実際の臨床使用に耐えうる簡便さ・質問票の長さと,それに付随して問題となってくる尺度の感受性・信頼性があげられる。特に,疫学調査においては十分と思われる評価尺度が持つ感受性や信頼性は,個人評価においてはより高いレベルの値が必要とされる。また,個人それぞれが持つ併存症や重傷度などのケース・ミックスを,どのように適切に調節し評価するべきか,さらに計時的に質問票をテストされることから生じる慣れの問題なども考慮されねばならない。慢性疾患時代に突入した現在,包括的指標をもって被医療者へのケアを還元すべきであるという考え方はもっともであり,上記のような問題点を自覚しながらもHRQOL評価の臨床現場応用への更なる研究と努力が必要であろう。

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