抄録
水産研究所は都道府県の水産試験研究機関と連携して、明治・大正期から現在に至るまで100年以上にわたり我が国周辺海域の海洋環境と水産生物、漁業に関する組織的な調査を実施してきたが、これにより取得された海洋環境情報や生物情報の多くは報告書や観測原簿等紙文書としてのみ保管されてきた。これらの資料は地球温暖化の影響を受けた我が国周辺海域の海洋環境の長期的な変動の実態や数十年の間隔で増減を繰り返すマイワシやニシンなどの水産資源の変動の要因を明らかにする上で重要なデータであるとして注目されている。このためこれらの未開発の研究資源を利用可能とすること及び紙の劣化等による情報の散逸に対処することを目的として資料の磁気化を行うとともに、水温や塩分などの海洋物理観測から卵稚仔、魚体、漁獲量等の生物調査情報までの多岐に渡る海洋生態系情報を統合するためのデータベースの開発を行った。