抄録
AI(人工知能)の急速な進歩に伴い、自然言語処理技術が急速に進化を遂げている。これにより、機械翻訳のアルゴリズムについても、ニューラル翻訳(NMT)が登場した。また特許調査については、中国特許の急激な増大により、中国語で書かれた特許を査読する頻度も多くなり、その際には、まず日本語または英語に機械翻訳したもので、内容を理解しようとするのが通常である。しかし、現状では中国特許の機械翻訳の精度は高くないことも多い。中国特許についてNMTを用いて翻訳した場合、その翻訳精度を調べた。ただし、本稿を記した時点(2017年9月)では、中国語から日本語へのNMTに対応したものは少なく、中国語から英語へのNMTシステムも合わせて調べることにより、翻訳精度を評価した。
評価した結果、従来のルールベース翻訳や、統計翻訳とNMTを比べると、NMTの方が、単語レベルでの翻訳精度では必ずしも高いとは限らず、むしろ翻訳精度が低下する場合もあることが分かった。しかし、文としての意味を理解する上では、NMTの方が文の構成を理解し易い傾向があり、これについては発表までに詳しくまとめる予定である。また、中国語から日本語への翻訳より、中国語から英語への翻訳のレベルの方が高く、翻訳精度を求めるならば、日本語より、英語で見る方の効果の方が現時点では大きいことが分かった。