グローバルに活躍する企業は競合企業と戦うために、事業方針に沿った知的財産戦略を持っていると思われる。本研究は、経済産業省が独自の分野で世界のトップを走る企業をまとめた「グローバルニッチトップ企業100選」の中から自転車部品業界で世界トップのS社を選び、その知的財産戦略を明らかにすることを目的にした。
S社は自転車部品業界で世界的に圧倒的なシェア(約85%)を持つことと、自転車部品の組み合わせであるコンポーネントは独自でありながら、その外部インターフェースが公開されていることから「自転車界のインテル」と言われている。しかし調査をするとビジネスモデルも知財戦略もインテルとは異なる。また、ヨーロッパを中心に自転車業界がEバイクに急速に移行する中、S社は後発でありながら、Eバイクのコンポーネントでも一定のシェアを確保している。そこでS社の自転車部品におけるトップシェア獲得と、Eバイク市場への参入における知財戦略を一部でも読み解くべく研究を行った。