抄録
ヒト染色体の分析手技が簡便化されて, いくつかの先天異常疾患が原因的に染色体異常にもとづくものであると解明されてきた.
そこで, 先天異常を含む中枢神経系疾患の集合体である重症心身障害児集団について, 染色体分析を試みたが, 興味ある結果を得た.
まず, 異常発現頻度が一般集団に比べて高いことが指摘できる. その頻度を高くしている原因は, ダウン症候群が多いことであるが, なぜ, 重障児施設に収容されたかということを厳密に考えなければならない.
また, その外に性染色体異常もみられるが, それだけでは重障児とはなり得ず, 別な中枢神経障害に対して, 付加的な因子となる可能性が強い. 従つて,重障児集団の染色体分析調査は, 染色体によらない中枢神経障害との相関を知るうえで重要であり, 今後, さらに調査研究が推進される必要性があるだろう.