抄録
脳腫瘍の治療成績が最近著しく向上してきた要因の根底には手術技術及び術前術後管理の向上がある. 麻酔の進歩は脳手術の安全性を高めたし, Glucocorticoidの使用は手術死亡率を著しく低下させた. Microsurgeryの導入は脳下垂体周辺腫瘍, 聴神経腫瘍や脳室系腫瘍の一部に根治手術を可能にした. 悪性脳腫瘍の治療成績向上は生存期間, 特に有意義な社会生活期間の延長に現れている. 最近10年間の著しい進歩をみると, 放射線増感剤使用による放射線治療(BAR療法), 脳腫瘍のCell kineticsを基礎として著しい効果をあげてきた化学療法, 臨床応用がはじめられた免疫補助療法などが治療成績の向上をもたらしてきたことがあげられる. Glioblastoma multiformeや転移性脳腫瘍患者において社会復帰, 長期生存例が出て来たことは, 10年前には考えられなかつたことであり, 脳腫瘍治療の将来に明るい見通しを与えるものといえよう.