医療
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抗癌剤の経口投与と直腸内投与
―FT-207の経口投与, FT-207坐剤の直腸内投与を中心に―
近田 千尋坂井 保信坂野 輝夫
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1975 年 29 巻 6 号 p. 612-621

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抄録

抗癌剤の生物学的特性を基礎に癌化学療法の効果向上を企図する立場から5-Fluorouracilの誘導体, FT-207の経口投与並びに直腸内投与に関する臨床研究を行つた. FT-207 1日400-1,200mg経口連日投与により再発・手術不能癌140例中34例24%に効果が認められ, 特に乳癌, 胃癌の肝, リンパ節などの転移巣に対し効果が大であつた. これらの有効例34例中12例35%は6ヵ月以上の効果持続を示した. 胃癌有効例の50%生存期間は10.5月, 乳癌有効例のそれは19.0月であり, それぞれ無効例に比し延長された. FT-207坐剤の直腸内投与1日1回連日投与31例中4例13%, 同1日2回連日投与10例中6例に効果が認められ, 後者において5例に50%以上の腫瘍縮小がみられた. 本剤の経口投与, 直腸内投与のもう一つの特性は副作用が軽微で少なく, 長期投与, 交替, 併用投与に有用であり, 癌化学療法の計画的治療の体系化に最適な投与法の一つである.

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© 一般社団法人国立医療学会
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