医療
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老人の手術適応と限界
池尻 泰二
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1975 年 29 巻 8 号 p. 822-832

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抄録
過去7年間の私どもの2,304手術例中, 70才以上の高令者122症例に検討を加えた. まず術前のRiskに関しては, 術後の合併症死亡に直結し得るものとして, 脳卒中後の半身不随, 高度の腎不全などが目立つていた. また高令者では青壮年者に比して術後死亡率は確かに高いが, このうち合併症死亡と見なすべき症例は, まず胆道・膵の悪性腫瘍, 次いで腸閉塞あるいは救急的な胆石手術など, いくつかの限られた疾患群に集中しており, 通常の定型的手術であれば, 胃切除, 胃全摘, 直腸切断といつた程度の手術侵襲にも, よく耐え得ていることを知つた.
対象疾患の多くが悪性腫瘍かEmergencyかであるという事情をも考えると, 高令というだけで手術適応に限界を設けることはむずかしく, むしろ, 手のかかる術前術後のCareを十分やつて行ける準備が私どもにあるかどうかが, 老人外科今後の問題であろう.
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