我々の病院の1969年より1974年までの入院患者1,001名のうちで, 老人(60才以上)の呼吸不全例の発生は, 31.3%であつた. 若年者の13.4%の発生に比して, 2.5倍である. しかも老人の呼吸不全の38%は死亡している.
老人の呼吸不全は, 老化した呼吸器を基盤にしておこるものである. 呼吸器の老化は, 加令そのものによる変化と, 生活歴の長さによる外界刺激の反復による変化との積み重ねである.
老人の呼吸器について加令による形態学的, 生理学的変化を検討して, 老人肺が若年者のそれに比して予備力の低いことを知つた.
老人の呼吸器疾患と呼吸不全との関係をみると, 肺結核を首位にして, 慢性閉塞性肺疾患がこれに次いでいる. 肺結核で重症の呼吸不全になると, それが死につながることもわかつた. 老人肺の予備力の低下のためである.
老人の肺結核, 慢性肺気腫, 気管支喘息などの閉塞性肺疾患, 肺炎などについて, その様相と呼吸不全との関連について述べた.
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