医療
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術後感染予防としての化学療法の再検討
菊地 金男小島 誠一芳賀 隆平山 隆
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1976 年 30 巻 10 号 p. 929-936

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抄録
当科の手術患者を対象とし, 二, 三の臨床的検索を行い, 術後抗生物質の予防的投与の可否について検討を加えた. 手術室, 病室の汚染度, 気道ならびに胃腸内常在菌, 術後感染症の起炎菌と予防的に投与した抗生物質に対する感受性との相関々係を追求した結果, 手術室, 病室の落下菌と術後感染症との間に因果関係はなく, 術前病原性ありと認められた常在菌が予防的に投与された抗生物質により激減したため, 他の非病原性の常在菌が繁殖し, 起炎菌となり, 感染症を惹き起こす例が多かつた. すなわち術後の予防的化学療法により菌交代現象を招き, 難治性の感染症に発展する傾向が強かつた. 従つて術後感染予防としての習慣的な抗生物質の投与は差控えて術前, 術後の患者管理, 特に一般状態の改善に重点をおき, 感染症の早期発見に努め, 発見後早期に適切な化学療法を行うべきことを強調したい.
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© 一般社団法人国立医療学会
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