抄録
従来内因性精神疾患の長期在院治療を中心とした国立精神療養所外来における最近の変遷, 特に神経症患者の増加に伴い, その対策を求める目的で神経症診療の概括的調査分析を行つた.
神経症は外来新患総数中に20%以上を占め, 内因性疾患, 特に分裂病とほぼ近接する高い比重を示す. 主要症状は近年増加を指摘される抑うつ状態の外, 心気, 不安状態の出現率が高く, 男性で心気状態が, 女性で不安状態が高率で, 特に男性の心気状態を示すものに予後の困難が多かつた.
これらについて発病に際する個体側の特性, 環境的諸要因の分析を行い男女及び年令などによる差異を示し, また治療方針の差異が経過に及ぼす影響を検討した. 外来診療上当面する若干の問題点を提起し, 今後増加の予想される神経症への対応につき討論を加えた.