抄録
1969年以来60例のペースメーカー植込みを行い, 電池交換などを含めて94回の手術を施行した. 植込機種は少数例を除き他の全例に単極デイマンド型を使用した. また刺激部位は全例経静脈による心内膜刺激法によつた. 単極型は電極も細く, 電池も一般に小型で, 外科手技上また患者の負担などの点で有利であるばかりでなく, 合併症も少なく, 特に双極型の使用を必要としたものは少なかつた. 最近では長寿命のリチウム電池型を使用することが多い. 心内膜刺激閾値の変動は植込後早期に急上昇する例もあるが, 電池交換時の測定では植込時の162%の上昇を認めたのみであつた. また経過中心電図調律の変化を認めた例では, 心房細動を呈するものが多かつた. 合併症治療に際しては, 特に再手術は慎重に対処すべきことを強調したい. 例えば閾値上昇例では電極変位と誤認しやすいので注意を要するし, また感染例でも軽度のものでは姑息的療法でも治療可能な例も少なくない.