出血傾向を主訴とし, 門脈圧亢進のない特発性門脈圧亢進症の1例を報告した. 症例は23才の男性で, 少年期より出血傾向が出没し, 17才のとき出血傾向と肝脾腫で入院, thromboastheniaと診断されたがステロイドが奏効した. 今回再び同症状で入院したが血球数に異常なく, 血小板数の軽度の減少と骨髄像の所見から血小板減少性紫斑病と診断され, 摘脾術が行われた. 術中の門脈圧は190cmH2Oと正常で胃大網静脈―左副腎静脈にシヤントがあつた. 組織学的には肝はfibrosis, 脾はfibroadenie, Gamma-Gandybodyがみられ特発性門脈圧亢進症と診断された. 手術後は経過良好で, 出血傾向は治癒した.
“特発性門脈圧亢進症”は機能的診断名であるため, 自然のシヤントが形成されている場合には門脈圧亢進を呈さない場合もある.