医療
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先天性第X因子欠乏症における大腿骨頸部骨折の術中・術後の止血管理を行つた1症例
酒井 秀章武田 久雄田中 久重八幡 順一郎森 和夫鈴木 宗三清野 保雄猿田 栄助
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1979 年 33 巻 8 号 p. 771-775

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抄録
先天性第X因子欠乏症は本邦では報告されているのが5例のみで極めて希な疾患である. その4番目の症例が1977年8月(当時17才)に左大腿骨頸部を骨折し, 約1ヵ月間保存的に治療したが不成功で, 観血的整復固定術(Jewett nailによる内固定)を行つた. その際の止血管理について検討した. この疾患で鼻出血か関節出血では第X因子活性10~20%で止血が期待出来るが, 大手術に関する報告はない. 手術症例の豊富な血友病の止血管理に関する報告も参考にし, 術中第X因子活性を100%, 術後3日間を50%以上, 更にその後2週間は30%以上に維持することを目標にした. その結果, 十分な止血効果が得られた. 第X因子の補充は漸減し5ヵ月間続けた. 術後16日目より訓練をはじめ, 1年後に患肢へ体重の3分の1までの荷重が許され, 両松葉杖による歩行訓練を行うまでになつた. 濃縮製剤の大量投与による副作用もみられず, 順調な経過をとつている.
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