抄録
腎細胞癌は骨に転移しやすい腫瘍の一つであるが, 泌尿器科の立場からこの骨転移について詳細な検討が行われていない. 今回, 腎細胞癌125例中, 臨床的に骨転移が認められた24例について臨床的検討を加え, 治療上の問題点について言及した. 骨転移を有する腎細胞癌では, 腎摘除例で生存期間の延長が認められるので, できるだけ原発巣の腎を摘除すべきである. 骨転移巣に対しては放射線療法を主体とした治療が行われていたが, 観血的治療が行われたのは4例で, うち3例は生存中である. 孤立性転移を認め腎摘除が可能なものでは延命が期待できるので, このような例には積極的治療を行うべきである. また骨転移による疼落痛や運動障害を伴うものには機能保持を考慮した治療を行う必要がある. 骨転移を伴う腎細胞癌に対して様々な治療が行われているが, その予後は不良であり, 今後, 各種治療法を駆使して, 予後の向上につとめる必要があると考える.