日本語教育
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寄稿論文
文章の理解・産出の認知過程を踏まえた教育ヘ
――伝達目的での読解と作文の実験とともに――
柏崎 秀子
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2010 年 146 巻 p. 34-48

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抄録

 より良い教育のためには,その対象たる学習者の心理を知ることが不可欠である。心理には情意的側面だけでなく認知的側面もあり,学習者の内部でどのようなことが起きているのか,その認知過程を踏まえることが大切である。本稿では,文を越えたまとまりである文章の理解・産出過程が,単語や文の理解に加え,知識による推論も含んだ,全体として結束した一貫性ある心的表象を形成する過程であることを示し,心理学諸研究を概観した。その上で,相手に伝える目的を持った読解と作文との融合実験から,伝達目的を持つことが想定相手の理解も推測した状況モデルの構築と産出を促進することを示し,かつ,実証的研究の取り組み方と日本語教育への示唆を述べた。さらに,第二言語としての日本語教育における最近の心理学的研究に触れ,認知過程を踏まえた教育の発展を希求した。

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© 2010 公益社団法人 日本語教育学会
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