医療
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治療に不応性であつた産褥性心筋症の1例
西崎 進時岡 正明三河 内弘西崎 良知村上 元正
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1980 年 34 巻 12 号 p. 1130-1133

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抄録
産褥性心筋症は欧米では相当数報告されているが, 我が国では36例余りが報告されているのみである.
今回我々が経験した症例は, 29才の会社員であり, 以前心疾患を指摘されたことはなかつた. 満期安産にて第1子出産後3日目に心不全状態が出現し, 次第に悪化したため産後6日目に当院に救急入院した.
心エコー図による産褥性心筋症の診断のもとに, 利尿剤, ジギタリスを投与したが反応しないため, ニトログリセリン, プラゾシンなどの血管拡張剤を投与した. しかし, この効果も一時的であり心不全状態が持続するため, ultrafiltration methodにて脱水を行つたが, 病状の悪化をくい止めることができず, 出産後23日目に死亡した.
剖検では両心室腔の拡大が著明であり, 組織像では心筋線維の著明な変性萎縮像が認められた. また肺動脈内に大量の血栓塞栓が見られ, これが治療に不応性であつた原因の一つと考えられた.
また, この患者は家族歴で母親が第2子(患者本人)を出産後40日程度で心疾患で死亡しており, 病因としての遺伝性の問題にも興味が持たれる
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© 一般社団法人国立医療学会
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