抄録
我々は血液透析患者25人に対し26例の外科手術を施行したが, 20例が良性疾患, 6例が悪性腫瘍であつた. 良性疾患の手術死亡率は5%であつたのに対し, 悪性腫瘍では33%と高い. 悪性腫瘍の死因の主たるものは縫合不全であり, 次いで肺合併症があげられる.
我々は縫合不全対策として, 腸管同志の吻合数の少ない術式を選ぶこと, 吻合部周辺の組織挫滅を少なくするためすべて手縫いで行うこと, 非吸収性の血管縫合糸を用いること, などの方針をとつている.
一方, 肺合併症の予防対策として, リスクのわるい高令者の場合には, 排痰が自分で十分にできると判断される段階まで人工呼吸器を用いる方針とし, また上気道経由でゾンデを留置することはさけ, 空腸瘻から挿入したゾンデを腸管を逆上させて残胃に留置する方針をとり, 排痰がしやすいようにしている.