医療
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成長ホルモン及びプロラクチンを産生し甲状腺濾胞腺癌を合併した下垂体腫瘍の1例
―PAP法による組織学的検討を含めて―
三宅 周河野 宏松海 信彦宮田 伊知郎石光 宏井上 文之村山 正毅
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1983 年 37 巻 12 号 p. 1204-1207

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抄録
症例は60才の女性である. 40才より, 四肢末端の肥大, 声変りを来し, 42才には閉経した. 1982年7月に胸部レ線上異常陰影をいわれ, 9月に入院した. 入院時, 末端の肥大, 甲状腺腫, 乳房より乳汁漏出をみた. 検査では, 血中成長ホルモン(GH)71.5ng/ml, プロラクチン(PRL)350.6ng/mlと異常高値をみたが, カルシトニンは正常内にとどまつた. 入院後の諸精査にて, 下垂体腫瘍(腺腫の疑い)と甲状腺の悪性腫瘍が考えられた. 1983年1月と2月に各々甲状腺と下垂体の摘出手術を施行した. 血中のGHとPRLは, 下垂体の手術後に著明に低下した. 組織所見は, 下垂体の色素嫌性腺腫と甲状腺の濾胞腺癌であつた. PAP (peroxidase antiperoxidase)法にて下垂体についてGHとPRLを染色したところ, 両者とも腫瘍細胞の一部の細胞質と細胞膜が陽性を示した. このような症例は, 1982年までに5例の報告をみるのみであり, ここに報告すると共に若干の検討を加えた.
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© 一般社団法人国立医療学会
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