抄録
症例は71才, 男性. 昭和57年8月ころより両下腿の浮腫を来し, 浮腫は漸次両下肢全体に及び精査のため58年1月21日入院. 入院時現症は両下肢の高度な浮腫, 表在リンパ節の腫大, 左腸骨窩の腫瘤で直腸診により硬い腫瘤の一部を触れる. 頸部リンパ節生検で腺癌の転移が疑われたので, 胃, 大腸透視, 静脈性腎孟造影などを行つた. 腸骨窩より頭側へCTスキヤンを行つた結果, 左腸骨窩より下腹部, 肝門部にかけて一連の腫瘤を認む. 特に臍部位では椎体を取り囲む巨大な腫瘤が認められた. 前立腺は触診上左葉がやや腫大し, 表面平滑で軟らかかつたが, 念のため針生検を施行したところ, 前立腺癌の組織診断を得た. Stilbestrol diphosphateの投与により表在リンパ節は著明に縮小した. リンパ管造影にてリンパ流は傍外腸骨動脈リンパ叢部で途絶し, 下肢浮腫は前立腺癌の深部リンパ節転移に起因するものと思われた.