1984 年 38 巻 12 号 p. 1138-1145
著者は, かつて1963年~1966年に当院精神科に入院して, 筋弛緩剤を用い, 挿管全身麻酔, 人工呼吸のもとに頭部通電けいれん治療(ECT)を行つた49症例, 耳介通電304, 前頭通電86回の通電直後からとつた心電図記録を整理し, 心停止, プロツク群, 心房細動, 心室性期外収縮その他厘々の不整派が出現し, 硫酸アトロピン0.5mgの前処置で, この不整脈はかなり減り, 1.0mgの前処置では激減することをみとめた. これらの不整脈は, 約5分で消失する一過性, 可逆性の, 主として副交感神経刺激性の中枢性不整脈と考えられる.
今日, 精神科治療の中心である向精神薬投与によつても, 悪性症候群や突然死が報告されており, ECTは硫酸アトロピンの前処置と充分な全身管理のもとでは安全で, 症例によつてはなおECTは有効で見直される価値のあることを述べた.