抄録
1980年以来, 当院に入院した慢性肝障害および原発性肝癌233例に, RIA法でAFP値を測定した. AFP高値群(≧200ng/ml)と低値群(<200ng/ml)の両群に原発性肝癌は存在した. 良性慢性肝障害にもAFP高値を示すものがあるため, AFP高値のとき, これら肝疾患をAFP値と, 基準値を設定した血液生化学値と腫瘍マーカー値とを併せて解析・鑑別した. 基準値については以下のように定めた.
GOT/GPT: 2以上, ALP: 20KAU以上, LDH: 450mIU以上, ICG:K=0.05以下, Ferritin: 200ng/ml以上, β2ミクログロブリン: 10ng/ml以上.
その結果, AFPが高値を示したとき, これらの成績の一部またはすべてが基準値を満たすときには, 肝癌を考慮する必要があり, 満たさぬときは良性肝障害の存在を考えた. 一方, AFP低値でも, これらの基準値を満たしていれば, 肝癌を考慮すべきと考えられた.