抄録
特発性門脈圧亢進症に免疫不全が関与していることが論じられている. 我々は慢性甲状腺炎を合併した特発性門脈圧亢進症を経験したので報告する.
10年前より貧血による呼吸困難を有する51才の女性で, 同時に鼻出血及び皮下出血をみた. 腹部では左肋骨弓下に脾腫をみた. 頸部には甲状腺・柔らかい腫脹をみた. 貧血はあるが黄疸はなかつた. 検査では汎血球減少があるが, 肝機能に異常はなかつた. 甲状腺検査ではT3の減少, TSHの上昇, サイロイドテスト及びマイクロゾームテストは陽性で, 甲状腺自己免疫疾患であつた. 腹腔動脈造影では肝動脈は正常, 脾腫があり, 脾静脈は蛇行拡張し, 門脈は開存していた. 脾摘及び食道離断術が施行された. 門脈圧は脾摘後340mmH20より240mmH20に下降した. 肝組織は正常であつた. 術後は順調で, 甲状腺末を服用している.
この症例は特発性門脈圧に免疫不全が関与しているかもしれないことを示唆している.