抄録
下趾壊疽, うつ血性心不全と一過性脳虚血発作を伴つた原発性血小板血症の1症例を報告する. 症例は78才女性で, 主訴は下趾壊疽, 胸部不快感および呼吸困難. 当院入院前に突然, 言語障害と右上肢の麻痺が出現したが, 数時間で消失し, 一過性脳虚血発作と診断されている. 理学的には右第5趾と左踵部に壊疽を認め, 胸部で心拡大と肺に湿性ラ音を聴取した. 末梢血では赤血球数458×104/mm3. 白血球数16800/mm3であつたが, 血小板数は140.4×10う/mm3と著増を認めた. 骨髄では有核細胞数35.8×104/mm3, 巨核球数800/mm3と増加していたが, 白血病細胞やPh1染色体は認めなかつた. 心エコー図で弁膜症や高血圧性変化を認めず, 虚血性心疾患によるうつ血性心不全と思われた.
以上より原発性血小板血症と診断し, その血栓症状として上記症状を呈したものと思われた. 本疾患で多臓器の血栓症状を呈した例は数例しか報告されておらず, まれな症例と思われた.