医療
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膵癌にみられる糖尿病の臨床的観察
若杉 英之原 泰寛瀬尾 洋介桑野 和夫山田 幸生安部 宗顕
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1987 年 41 巻 1 号 p. 37-42

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抄録
膵癌110症例(男67, 女43名)における糖尿病確診, 疑診, 正常は入院時各々21.8, 29.1, 49.1%, その後の経過で37.3, 29.1, 33.6%となつた. 糖尿病が膵癌より明らかに先行した一次性糖尿病は5.5%と考えられた. 膵癌に基づく糖尿病の膵癌部位別頻度は, 膵頭側の癌で高率であつた. 経過中に血清, 尿アミラーゼ高値, 主膵管の拡張, 膵萎縮を示した症例は膵体尾部癌に比し膵頭部癌で多く, 腫瘍が頭側に位置するとき閉塞性膵炎が高頻度に出現した. このように糖尿病の発現には, 癌自体よりも尾側の膵炎病変の広がりが大きく関与するものと考えられた. また, 手術(膵切除), 放射線照射, IVH施行症例において糖尿病の出現頻度が高かつた. 膵癌症例では食事摂取量の低下, 変動が認められ, 24.5%にインスリン治療が行われた. 糖尿病性血管症は少なく, 低栄養状態が多くの症例でみられた. したがつて充分なカロリー補給とそれに適応したインスリン投与が重要となる.
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© 一般社団法人国立医療学会
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