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ラツトにおけるバルプロ酸の抗痙攣作用に及ぼす慢性アルコール投与の影響
田中 昭吉古川 哲也安達 恭祐石本 三洋
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1987 年 41 巻 7 号 p. 653-656

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抄録
てんかん患者がアルコールを飲用した場合という社会的見地から, バルプロ酸とエタノールの相互作用について動物痙攣モデルを用いて検討した. バルプロ酸200mg/kg P. O. 15分前に投与し, 痙攣発現率80%のpentylenetetrazolを投与すると約38%痙攣が抑制された.エタノール慢性処置群のラツトにおいては, この痙攣抑制効果は増強され59%であつた. 対照ラツトのバルプロ酸200mg/kg P. O. 投与後の血中濃度は約30分にピークをもち, 46.55±7.20 (n=8)μg/mlであつた. 一方, エタノール処置ラツトでは, 15~75分まで対照の約3倍高い血中濃度を維持した. アルコール処置ラツトでは, 肝臓のコハク酸脱水素酵素活性は有意に減少していた. 以上, アルコールを慢性的に投与されたラツトにおいて, バルプロ酸の血中濃度は著明に上昇し, その抗痙攣効果が増強することを示し, この効果の機序にはアルコールの肝障害による代謝抑制が一部含まれる可能性を示唆した.
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