抄録
当院産科を受診し, 妊娠, 分娩, 産褥が正常であつた26例(年令20~33才, 28.4±2.2(SD)才)を対象に妊娠15, 32, 34, 36, 38週, 分娩後28~44(35.9±6.9)日のlecithin: cholesterol acyltransferase (LCAT), 総コレステロール(TC), HDLコレステロール(HDL-C)を測定.
1) LCATは妊娠15週に比し32週有意に増加(78±15 vs 91±17nmol/ml/h, p<0.05).
32~38週の間で有意差なし. 分娩後64±15nmol/ml/hで15週より有意に低値(p<0.01).
2) 妊娠15週のTCに比し32週有意に増加(184±24 vs 244±51mg/dl, p<0.01). 32~38週の間で有意差なし. 分娩後は228±45mg/dlと36, 38週より有意に低値(p<0.05), 32, 34週と有意差なく, 15週に比し有意に高値(p<0.001). 3) HDL-Cは妊娠初期, 末期, 分娩後平均約70mg/dlで有意差なし.
これらの脂質代謝異常が将来, 動脈硬化性疾患の発症に関与してくる可能性があるか否か検討を続ける必要があろう.