抄録
1967年より1986年までの20年間に, 当院で手術を施行した原発性乳癌1051例のうち, 乳癌予後因子(組織学的リンパ節転移と腫瘍の大きさ)と臨床経過不一致例を対象に, 他の予後因子との関連について検討した.
予後良好と推測される組織学的リンパ節転移陰性(n0)症例(ただしT4症例を除く)508例中再発した60例をn0再発群とし, n0非再発群448例と比較する一方, 予後不良と推測されるリンパ節転移高度の症例(腋窩リンパ節転移個数8個以上, または鎖骨下リンパ節転移陽性), およびT4症例194例中3年以上再発を認めない61例を進行癌非再発群とし, 進行癌再発群133例と比較検討した.
n0再発群は非再発群に比し, 病理組織学的予後因子(組織型, 波及度, 異型度, 浸潤増殖様式, リンパ管侵襲度)で悪性度の高いものが多く, n0でもこのような症例には術後補助療法を行う必要があると考えられた.
進行癌症例では, n0症例ほど明確な差が認められなかつた.これは術前局所動注を含めた積極的な術前術後療法による効果と思われた.