抄録
昭和50年より昭和61年までの11年間に, 病理組織学的に腎細胞癌と診断された症例は23例である. これら23症例を対象として, 宿主側および腫瘍側より予後を規制する各因子について検討を加えた.
全症例の生存率は1年生存率90.7%, 3年生存率78.9%, 5年生存率70.2%であつた.
宿主側因子として性差, 臨床症状, 血沈, α2-globulinおよびCRPの検討を行い, 血沈とα2-globulinに有意差を認めた. しかし統計学的に有意差はみられなかつたものの, 女子の5年生存率は男子に比べて高く, 明らかに予後は良好であつた.
腫瘍側因子としては摘出腎重量, stage, gradeおよび細胞型に検討を加えた. 予後規制因子として有意差が認められたものは摘出腎重量とstageで, grade分類および細胞型と予後との間には相関は認められなかつた.