1990 年 44 巻 2 号 p. 106-110
1979年より1988年までの10年間に国立福岡中央病院にて手術を施行した大腸癌イレウス症例60例に対して検討を加えた.
主癌占拠部位別にイレウス発症の頻度をみると, S状結腸癌が26例と最も多かつたが, 全手術症例に対する比率でみると, 結腸の部位間には有意差はなかつた. しかし直腸癌では絶対数, 比率ともに著明に低かつた.
イレウス例60例と非イレウス例436例を比較すると, 切除率, 治癒切除率ともにイレウス例で低く, また治癒切除術が可能であつた症例でもその予後はイレウス例で不良であつた. 切除例の病理学的検索では, イレウス例では組織分化度が低い上に静脈侵襲, リンパ管侵襲の程度が高度であつた. 左側結腸癌によるイレウスでは従来二期分割手術が多かつたが, 最近はIVHとイレウスチユーブの活用により安全に一期手術が行えるようになつた.