1990 年 44 巻 2 号 p. 111-119
latex agglutination testで糞便中のClostridium difficile毒素陽性例17例の臨床的検討を行つた. 平均年令は65.3才で, 1例の健常成人男性を除いて, 原疾患はいずれも重症であつた. 2例を除いて抗生物質使用中に発生しており, 2例は中止後4日, 20日目にそれぞれ発症がみられた. 臨床症状では, 食思不振が先行し, 続いて特徴的な悪臭の強い水様性下痢が起こつてくることが多い. また1例には血便をみた. 熱型は, 微熱にときどき38℃以上の高熱が混じる. 腹痛, 悪心, 嘔吐は目立たない. 検査所見では, 好中球増多, CRP, ムコ蛋白の感度が高く, 白血球増多, 血沈充進の感度は低い. また86%の例で低Alb血症を呈した. 治療はバンコマイシン, メトロニダゾールが著効を呈したが, 38%に再発がみられ, その5例中4例は治療後の抗生物質の使用はないにもかかわらず再発した. 再々発も1例みられた. 治療が遅れた例では, 急速に栄養失調状態が進行していた.