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腫瘍内出血をきたした聴神経鞘腫の1例
高里 良男斉藤 淳太田 禎久新井 俊成宍戸 恒郎山田 和昭
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1992 年 46 巻 1 号 p. 39-44

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抄録
脳腫瘍の腫瘍性出血(腫瘍内出血, クモ膜下出血, 硬膜下出血, 脳内出血)のうち, 神経鞘腫の占める割合はかなり少ないとされている. 今回46歳, 女性で入院経過中に突然の片側頭痛と三叉神経症状の増悪を呈した聴神経鞘腫症例を経験したので報告する. 急性増悪後のX線CTでは腫瘍内に血腫の高吸収域が認められ, MRIではこれがさらに鮮明に腫瘍内出血として描出された. 組織像はAntoni AとBの混合型で壁の薄い拡張血管が多数認められた.
聴神経腫瘍の腫瘍性出血で詳細が記載されている報告は本例を入れて19例で, その共通事項としては腫瘍が2~3cm以上と大きく, 既往症状として難聴や小脳失調がほぼ全例に認められることであった. 腫瘍性出血のうちクモ膜下出血(12例), 脳内出血(3例), 硬膜下出血(1例)は腫瘍内出血(19例)の漏出と考えられた. その予後は, 特にX線CTの導入以降は良好といえた.
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