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ムーコル髄膜脳炎を合併したアルコール性肝硬変の1例
堀江 義則高橋 久雄赤井 淳一郎奥山 啓二高木 俊和丸山 勝也高木 敏重田 洋介
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1992 年 46 巻 11 号 p. 888-893

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抄録
症例は52歳, 男性. 20歳代より大酒家で, 総飲酒量は純エタノール換算約1500kgである. 47歳時, 肝組織診断にてアルコール性肝硬変と診断された. 今回, 連続飲酒状態となり, 黄疽, 腹水, GOT, GPTの増悪, 白血球増多, 発熱を認め入院した. 抗生剤を投与するも白血球増多, 発熱は持続した. 35病日より左眼球突出, 左III-IV脳神経麻痺が出現した. 徐々に意識状態が悪化し, 39病日, ショック状態となり死亡した. 剖検にてムーコル髄膜脳炎の軟膜への出血性浸潤による脳底部出血を認めた. 本例のようなアルコール依存症に伴う肝硬変において精神神経症状を呈する場合, アルコール精神病, 肝性脳症などとの鑑別が困難となるが, アルコール性肝硬変のような免疫不全状態に, 特有の眼窩感染症状を認める場合には副鼻腔脳型のムーコル症を考え, 積極的な治療が必要と思われる.
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© 一般社団法人国立医療学会
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