1992 年 46 巻 2 号 p. 115-120
MDSの治療としてビタミンD3投与は分化誘導療法の一つとして確立しているが, 今回我々はビタミンD3投与による血小板減少をきたしたMDSの症例を経験した. 患者は78歳男性, 汎血球減少のため他院より紹介入院, 入院時現症では, 肝脾腫, リンパ節腫脹も認めず, 検査所見ではWBC 8100/μl, Hb 10.49/dl, Plt 6.6×104/μlで末梢血に3%の芽球を認めた. 骨髄所見と多彩な染色体異常よりRefractory Anemia (RA)と診断しビタミンD3を0.75μg/日より投与開始し3μg/日まで増量したが汎血球減少, ことに血小板の減少が進行した. 末梢血, 骨髄とも細胞成分に質的変化は見られなかった. D3を中止したところ1週間以内に血小板増加が見られ治療前値に回復した. provoking testによる汎血球減少の再現が見られたが, ビタミンD3投与前後においてGおよびGMコロニーの生成はともにみられなかった. ビタミンD3のMDSにおける作用機序を解明する上で重要な症例と考えられた.