医療
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アスベスト曝露と癌発生の関係
―呉医療圏における経験―
片山 正一
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1993 年 47 巻 9 号 p. 661-666

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抄録
肺がん剖検例124例中, アスベスト高曝露群(アスベスト小体数151本以上/5g肺湿重量)は23例, 18.5%を数え, 肝細胞がん剖検例97例中9例, 9.3%, 対照剖検例115例中10例, 8.7%に比べて約2倍の数値であり, 統計上有意に高率であった. 検討した肺がん, 肝細胞がん, 対照例計336例のうち高曝露例は42例であり, そのうち肺がんは23例, 54.8%と半数をこえていた. 肺がん124例の男女比は3:1であり, 男性肺がん93例のうち扁平上皮がんは22.6%と低率であったのに対し, 小細胞がんと大細胞がんを合わせた未分化がんは37.6%と高率であり, 腺がんの39.8%とほぼ同率であった. 女性肺がん31例のうち扁平上皮がんはわずか1例, 3.2%ときわめて低率であるのに対し, 腺がんは23例, 74.2%と高率であり, 未分化がんでも7例, 22.6%と高い数字を示した. アスベスト高曝露群肺がん例23例のうち, 扁平上皮がんは3例, 13.0%に過ぎなかったが, 未分化がんは11例, 47.0%とほぼ半数を占めた. 高曝露例42例の職歴1のうち, 肺がん例の65.2%に職業性アスベスト曝露が認められると同時に, 肝細胞がん, 対照例でも平均42%に職業性曝露歴がみられ, 呉医療圏の過去の特殊なアスベスト環境が示唆された.
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© 一般社団法人国立医療学会
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