1994 年 48 巻 5 号 p. 376-380
特発性脳梗塞の1新生児例を経験した. 症例は在胎39週5日, 出生体重4352gで出生した男児で, 周産期の異常はまったく認められなかった. 日齢1に眼瞼および口唇に始まる右上下肢の間代性けいれんが出現し, 頭部CTおよびMRIにて左前頭葉から側頭葉, および右後頭葉に脳梗塞の所見が認められた. ワェノバルビタールおよびフェニトィンの投与にてけいれんは消失した. 周産期に明らかな異常が認められなかったことから, 特発性脳梗塞と診断した. 近年, 画像診断の発達により新生児特発性脳梗塞の報告が増加しつつあるが, 本症例のように2ヵ所以上の梗塞巣を示す報告例はまれであると思われた. また, ローリスクの新生児における片側性けいれんを診療する際には, 本疾患を鑑別しておく必要があると考えられた.