抄録
胃の非上皮性腫瘍の中でもまれな胃神経鞘腫の1手術例を経験したので文献的考察を加え報告した. 患者は53歳, 女性. 無症状で胃集検で異常を指摘された. X線および内視鏡による精密検査にて, 胃体上部の径約5×4cmの粘膜下腫瘍と診断された. 生検では質的診断は得られなかった. 大きさおよび中心部に潰瘍を有することから悪性の可能性も考え, 近位側胃切除術を施行した. 術後の免疫組織化学染色を含む病理組織学的検索にて神経鞘腫と診断された.
一般に, 粘膜下腫瘍の形態をとることが多い胃非上皮性腫瘍の正確な病理組織診断を得るには術後一定期間を要するのが実状であり, 腫瘍の生物学的悪性度に基づく適切な手術術式がそれぞれの症例において選択されているとはいいがたい. 今後, 少なくとも術中に判定できる胃粘膜下腫瘍の正確な質的診断法が確立されることが望まれる.