抄録
血液中, 腹水中のアデノシンデアミナーゼ(ADA), CA-125が高値を示し, 抗結核剤による治療によりその変化を観察しえた結核性腹膜炎の1例を経験したので報告する. 症例は26歳女性, 妊娠8週と診断された後, 腹部膨満が出現し, 腹水を指摘され精査のため入院. 腹水, 発熱, CRPとα2グロブリンの増加がみられた. 腹水は滲出液で細胞診, 培養は陰性, 細胞はリンパ球が約80%であった. 腹水, 血液中のADA, CA-125が高値を示した. 妊娠第11週で自然流産, その後試験開腹術を施行した. 腹膜は肥厚し, 腹膜, 腸管, 卵巣, 卵管の表面には粟粒大の白色の結節が散布性にみられた. 腹膜の結節病変の病理組織所見よりラングハンス型巨細胞と一部に乾酪壊死を伴った類上皮肉芽腫がみられ, Ziehl-Neelsen染色陽性桿菌を認めた. 抗結核剤による治療により炎症反応は陰性化し, ADA, CA-125も低下した.