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流行性耳下腺炎の経過中に汎血球減少症をきたした特発性門脈圧亢進症の1例
影山 洋中山 成一小松 崎修
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1995 年 49 巻 8 号 p. 681-685

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抄録

流行性耳下腺炎の経過中に汎血球減少症をきたした特発性門脈圧亢進症の1例を報告する. 症例は30歳の女性, 入院10日前頃より38~39℃の発熱のため外来受診, 汎血球減少症あり, 精査のため入院. 骨髄穿刺では3系統の血球とも正常かやや過形成であった. 腹部CTスキャンでは肝の腫大と脾腫がみられた. 第3病日に耳下腺, 顎下腺の腫脹と疼痛が出現, 唾液腺型優位の血清アミラーゼの上昇と流行性耳下腺炎ウィルスに対する抗体価の優位の上昇がみられた. 入院後1カ月には白血球, 赤血球, 血小板いずれも入院時より上昇を示したが, 依然として軽度の汎血球減少症であった. 各種ウィルス抗原抗体検査は陰性, インドシアニングリーンの停滞率も正常, さらに血管造影では門脈, 肝静脈には閉塞の所見はみられなかった. 本症例でみられた著しい汎血球減少症は流行性耳下腺炎ウィルスの感染により, 何らかの機序により末梢での血球の破壊により引き起こされたものと考えた.

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