抄録
国立京都病院において, 1986年に69件であったMRSAの検出患者数が1988年には190件まで増加し, その後減少したが, 1994年以降再び増加し, 150件を越えるようになった. MRSAは喀痰から最も多く検出され, 尿と合わせると57%を占めた. 1994年には, MRSAに対して高率に感受性を示す抗生物質はVCM, ABK, ST合剤のみであった. 救命救急センター(ICU)におけるMRSAの保菌患者は病院全体の20%近くを占めた. また, ICU内で感染する患者が年々増加し, 保菌状態のままで転棟する者が67%にのぼった. ICU内での空中落下細菌はICU入口やナースステーションに多く, 患者のシーツなどのほか, ナースの手からも菌のコロニーが多数検出された. MRSAは健常者には感染しない菌であるが, イムノコンプロマイズドホストが多く, 人工換気などの操作が行なわれるICUではとくに, 室内の浄化や医療従事者の手の消毒も重要であることが再認識された.