特殊教育学研究
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聴覚障害児の比喩文理解に関する実験的検討
澤 隆史吉野 公喜
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1994 年 31 巻 4 号 p. 19-26

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抄録

聴力、知能指数、読書力で統制した聴覚障害児44名に20題からなる多肢選択課題を課し、比喩文の理解を検討した。使用した比喩文は、その意味内容によって知覚的比喩文と概念比喩文に分けられる。分析は主に正答数及び各選択肢の選択率について行った。実験の結果、聴覚障害児は10歳を過ぎても概念的比喩文の理解に顕著な伸びを示さず、また知覚的比喩文の理解も健常児より遅れることが分かった。さらに年少の被験児は比喩文を非合理的に解釈すること、また比喩文の理解が困難な被験児は文の比喩的な解釈を中断し、解釈の容易な字義的文を選択することが示された。比喩文理解の困難は一つの事象を多様な側面からとらえ、また異なるカテゴリーに属する事象を類似性の観点から結び付ける推論能力の不足に拠るものと推測した。このような能力の伸長には、日常生活における豊富な体験とそれを概念として定着させるための適切な指導が必要であると考えた。

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© 1994 日本特殊教育学会
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