抄録
重症心身障害者の肺炎等呼吸器感染症7例(延べ19例)に, 経鼻気管内吸引を施行した. その適応は喘鳴あるいは異常呼吸音があり, 間接的な方法では排痰不十分と判断された症例であった. カテーテルの気管への挿入は難易差はあったが, 全症例で可能であった. その際, クードチップ型カテーテルが気管への挿入に有用であった. 全例治癒したが, 3例はさらに他の処置を要した. そのうちの1例は喀痰が多く, 小気管切開術(minitracheotomy, 以下MT)を施行したところきわめて有効で, 治癒した. 他の1例は頚部の強い後屈を反復する症例で, MT施行後1日でカニューレが抜け, その後上部気管狭窄を認め気管切開を施行し治癒した. 残る1例は空洞を伴う肺膿瘍から膿気胸に進展し, 胸腔ドレナージを施行し治癒した. 経鼻気管内吸引は, 簡便で看護婦にもできる, 他の方法に先立つ有用な方法と考えられた. また, MTは症例によっては, 気管切開を回避できる簡便, 有用な方法である.