医療
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オーダリングシステムの導入と問題点
第52回国立病院療養所総合医学会
開原 成允中西 年久廣瀬 脩二山崎 邦夫菅原 猛志
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1998 年 52 巻 9 号 p. 539-547

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抄録

日本の病院ではじめてオーダリングシステムを本格的に行ったのは東京都立駒込病院で, 1970年代の半ばのことである. この頃は, 医師が診療を行いながらコンピュータを使うことは不可能であると考えていた人が多かったから, 開発者もそれを使う医師も非常な苦労をしたが, 困難を乗り切れば大きな効果が得られることを示したのであった.
これに勇気づけられて, 次に挑戦したのは国立大学病院であった. 高知医科大学病院はそのパイオニアで, 学長の優れた指導力の下で見事に成功させた. それ以降は, オーダリングシステム導入の流れは加速され, 今では国立大学病院のほぼ100%に普及している.
これに比べ, 国立病院は今その流れが始まろうとしている所である. まだオーダリングシステムを導入した病院は10%程度であろうが, ここ2, 3年で大きく変わる可能性がある. 国立病院にとっては, 今が大変重要な時期であり, その意味で今回のシンポジウムの意義は大きい.
今回の発表を聞いてみると, 薬剤, 事務などは問題なく歓迎であり, 医師は入力の負担が非常に大きいことが述べられた, それは当然で, 医師によってデータ入力作業が行われることにより, 他部門の業務量は著しく減少するからである. したがって, 医師への負担をどれだけ少なくするかが, オーダリングシステム成功の鍵であるとも言える. しかし, この際医師の負担を減少させるのみではなく, 医師へ還元させる付加価値を大きくすることがより重要であることが指摘された.
これは非常に重要な点で, オーダリングシステムはともすれば, 病院業務の効率化の道具であると思われがちであるが, 実はその意義は新しい付加価値にある. 医師への情報提供によって, 医療の質を向上させることもできるし. またオーダリングシステムの結果蓄積される診療データベースは臨床研究の宝庫ともなる. 診察室の端末からインターネットの無限に広がる世界に触れるようにすることもできる.
これらのオーダリングシステムによってもたらされる付加価値は, まだ十分に開発されたり, 利用されたりしていない. それはこれからの実り多い分野である. ここに国立病院がこれから貢献できる大きな領域がある. このシンポジウムを機会に国立病院が一丸となって, オーダリングシステムの新たな価値を作り上げていくことを期待したい.

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© 一般社団法人国立医療学会
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