1999 年 53 巻 4 号 p. 231-238
ヒトの好中球は外部からの刺激に反応して活性酸素を産生し放出するが, まず最初に産生される活性酸素はスーパー・オキシドである. この反応は, 好中球の細胞膜で行われ, 細胞内のNADPHから電子を受け取って細胞外の酸素に受け渡す電子伝達系であり, NADPHオキシダーゼとも呼ばれている. この反応にかかわる酵素は7種類の蛋白からなる複合体であり, その構成要素はそれぞれgp91Phox, p22Phox, Rap1A, p47Phox, p67Phox, p40Phox, Rac1/2と呼ばれている. これらの分子の間での結合様式などが詳細に研究されてきた. また, 細胞膜上の受容体からこれらの活性酸素産生系に至る細胞内刺激伝達においてはMAPキナーゼファミリーのp38が重要な役割を果たすと考えられている. 一方, 様々のサイトカインは好中球の活性酸素産生を直接惹起するよりもむしろ, 他の刺激物質による活性酸素産生を増強する作用(プライミング)を有し生理的にも重要であるが, その機序に関してはほとんど解明されておらず今後の重要な研究課題である.