医療
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医療事故防止対策の実際
武者 広隆邊見 弘
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2001 年 55 巻 12 号 p. 610-611

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抄録
最近, マスコミを中心に医療事故が大きな社会問題として取り上げられている. 厚生省においても, 国立病院部政策医療課が中心となり, リスクマネージメントスタンダードマニュアルが作成され, 各施設での医療事故防止体制の確立を促しつつある. 一つの大きな医療事故の背景には, 29の小さな事故があり, それらの背景には約300ものニアミスが隠れているという. したがって, ニアミス事例の検討こそ, 将来の医療事故防止のために行わなければならないものであり, その検討結果の職員への公表と対策が大切である. このシンポジウムにおいては, 医療事故防止対策について, 川村治子杏林大学教授より基調講演を頂くとともに, 3名に医療現場より発言をもとめた.
川村教授からは, ヒヤリ・ハット事例の事故防止のための有用な理由についての解説とともに, 医療事故には, 医療行為がからんで発生した事故と, 医療行為のからまない事故の2群に分けられ, これらを整理して, その内容を検討する必要性が強調された. いくつかの具体的事例の提示とその危険要因の解説もあり, 多数事例を患者と発生状況から分析することが, 事故防止などの基本的かつ共通の考え方を整理するのに有用であることが示された.
医療の現場より, 医師の立場からは診療内容の情報公開の必要性を, 看護の立場からは医療の現場において, 看護職のリスクマネージャーとしての活動の重要性を, また, コメディカルの立場からは医師からの情報発信の必要性, さらに職員間のコミュニケーションの充実が大切であることが示された.
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© 一般社団法人国立医療学会
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