抄録
現在, 国立療養所岩手病院(当院)を含む全国の国立病院・療養所には, 政策医療を積極的に遂行することが要請されている. 当院神経内科が, 政策医療の一つである神経難病医療を推進した場合の将来像を知るために, 当院に受療する神経難病患者の居住地の地理的分布から, 既存の医療行政的医療圏とは異なる「神経難病医療圏」を定め, その現状を分析した. 当院の神経難病医療圏は当院を中心とした半径約30kmの地域であり, 岩手県と宮城県にまたがり, 人口は51.5万人であった. この医療圏の神経難病患者の21.1%(当院から半径15km以内に限定すると49.1%)が当院に受療していた. この医療圏と周辺地域とには神経難病の長期診療において当院と競合する施設はなかった. 以上より, 神経難病医療を積極的かっ広域に展開すれば, 当院の受療患者数がかなり増加すると期待される. 当院が神経難病の分野で政策医療を推進してゆくことは充分に可能である.