抄録
厚生労働省が特定疾患として認定しているいわゆる難病は, 病因論あるいは症候論的な概念ではなく, 多分に社会政策的な概念で括ることができる. そのような難病に対して対策を立てる際には, 患者数やその動向, 基本的属性や病態の分布を知ることが不可欠であるので, 治療研究事業対象となっていない難病(受給未対象疾患)を対象とした全国疫学調査を実施し, その実態を明らかにすることを試みた. 厚生省特定疾患調査研究事業により研究を行っている調査研究班が対象としている特定疾患調査研究対象118疾患から, すでに治療研究事業の対象となっている43疾患(受給対象疾患名としては41疾患), 治療研究事業対象疾患以外であっても1993年度以降特定疾患の疫学に関する研究班によって全国疫学調査が行われた29疾患, 診断基準が確立していない6疾患, 患者数が少ない5疾患, 他の調査研究対象疾患に含まれる1疾患を除き, 34疾患59病態に対して疫学調査を実施した. 調査は, 患者数調査と疫学・臨床像調査に分けた. 患者数調査では回収調査票は14, 267通(回収率61.0%), 疫学・臨床像調査では調査票は8,451人分が報告された. 本論文では, 各疾患の推計患者数ならびに共通の疫学像を報告する. 今回の資料が, 今後の行政および臨床における難病対策に資することを期待したい.